MDR対応へのアプローチ

欧州の医療機器業界は、規制に関して驚異的な変化を目の当たりにしています。この変化は、米国の枠組みと同等になるように、さまざまな機関が長年行ってきた研究の結果として現れたものです。米国と欧州の医療機器市場を比較すると、2.6%で成長している欧州の医療機器市場とは対照的に、米国市場は2017年の成長率が6.6%であり、1,550億ドル以上に達しています。欧州の医療機器指令は非常に古く、現在の市場ニーズに従った構成ではありません。このことは、機器を使用しようとしている消費者の安全に直接関係します。加盟国間のコミュニケーションの欠如、有害事象を登録するための共通プラットフォームの欠如、及び各段階で実施されるさまざまな監査の進捗状況を追跡する能力の欠如は、業界の成長の妨げとなっていました。さらに、立法機関では、市販品の品質について確実な対応がなされません。
上記のすべての要因により、医療機器及び能動埋め込み医療機器に関する欧州の既存の規制を修正するための徹底的なブレインストーミングを実施することが決定されました。その結果、各加盟国の境界を越えて一様に機器の規制が行われ、すべての加盟国は、合法的に市場で販売された特定のデバイスに関連する変更及び情報を適時に知ることができるようになります。
欧州での新しい医療機器規則の導入に伴い、多くの医療機器の管理方法は、分類の変更、臨床データの要求事項、及び監視に求められる内容によって変わってきます。複数のデータ及び遵守システムに対する追加の要求事項は、製造業者に経済的負担をかけ、特定の製品の販売中止の決定や、追加投資する余裕のある会社との合併の決定に結びつく可能性があります。

欧州の規制構造、医療機器規則の発展、そして変化のきっかけ

欧州の規制構造、医療機器規則の発展、そして変化のきっかけ

欧州連合条約(TEU)の第13条によると、欧州には規制の枠組みを管理する7つの機関があります。それらとは別に、条約の下での設立ではない他の機関があります。7つの機関のうち、欧州議会及び欧州評議会が立法権を有しています。欧州理事会は、政治の方向性及び優先事項を形成する機関として、欧州委員会は、法律の提案、決定の実施、EU条約の支持、及びEUの日常業務の管理を担当する行政府として機能します。
新しい医療機器規則には、欧州理事会、欧州評議会、欧州議会、及び欧州委員会が関与します。新しい規則の最初のアイデアは、2008年に誕生しました。最初のドラフトは2012年に公布され、2017年5月26日に施行されました。

欧州議会は、既存の指令は時代遅れであり、利害関係者ごとに理解や解釈のし方が異なっていると判断しました。既存の医療機器指令の問題は、乳房インプラントや金属製股関節のような特定の症例で事故が発生した場合に取り扱われてきていました。これらすべての要因が欧州の医療機器市場に影響を及ぼすこととなり、一貫して高いレベルの安全性を保証し、欧州の境界を越えてさまざまな機器の公正な取引を可能にし、科学技術の進展を促進するような規制システムが制定されました。

既存の医療機器指令の変更

既存の医療機器指令の変更

新しい欧州医療機器規則には、10の章、123の条項、22の規則、27の附属書が含まれます。32の実施法令(08は義務的)及び11の委任法令があります。概して、新しい医療機器規則によって導入されると考えられる変更のいくつかは、次のとおりです。

  • ・これまで他のいかなる形態の機器とも差異なく規制されていた高リスクの機器は、厳密に管理され、規制当局から専門的関与を受ける可能性があります。
  • ・大部分の審査に関与するノーティファイドボディに対する統制は強化されます。
  • ・以前は定義から除外されていた化粧品又はエステティック製品の一部が、今回は含まれます。
  • ・機器の管理向上のため、すべての製造業者、ノーティファイドボディ、及び規制当局が欧州データベースを使用することによって透明性が確保されます。
  • ・医療機器のトレーサビリティは、機器個体識別子の実装の義務によって保証されます。
  • ・EU域内全域の臨床試験のための協調的アプローチ
  • ・臨床的エビデンス及び市販後調査関係の規則の強化
  • ・再処理可能な単回使用の機器の定義の提供
医療機器規則申請のスケジュール

医療機器規則申請のスケジュール

医療機器業界は、長年にわたり古い医療機器指令を受け入れてきました。業界及び規制当局が変更の準備を整える前に実施すべき多くのバックグラウンド業務及び準備があります。これらすべての側面を考慮して、欧州委員会は施行日から申請日まで、3年間の移行期間を設定しました。

定義された移行については、ノーティファイドボディによって発行された認証の適用可能性が考慮され、施行日後に発行された製造販売承認の妥当性に十分な配慮が払われました。条項ごとに適用日が異なるため、規則の最終適用前でもスムーズな移行と市場承認申請の提供が可能です。

結論

欧州医療機器規則の最新の変更は、事業者、製造業者、サービス提供者、規制当局、及び欧州機関などのさまざまな団体の運営に影響を及ぼします。この変更には、医療機器業界の確固たる意思が見られ、その変更により、医療機器の革新及びより安全な開発への新たな扉が開かれると思われます。HCLは、規制関連のコンサルタントを幅広く抱え、必要な期間内の変更に対応するために、業界に対する専門的なサービスの提供に取り組んでいます。