AI でデジタルトランスフォーメーションに革命をもたらす

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AIでデジタルトランスフォーメーション
に革命をもたらす

生成AIの出現により、組織では複雑なトランスフォーメーションを加速し、プログラム実現のプロセスを合理化できるようになりました。パッケージアプリケーションにとって、これにはどのような意味があるでしょうか。

Sadagopan S

Sadagopan S

SaaS/商用アプリケーション担当EVP兼グローバルヘッド、
デジタルビジネス・サービス、HCLTech

2024年5月28日 所要時間約4分

AI は近年出現した、最も革命的なテクノロジーのひとつであり、HCLTech でパッケージアプリケーション業務を統括する私が職務上でお会いする経営幹部との会話でも、主要な話題のひとつです。多くの会話はビジネス上での AI の活用例に関することですが、当社では、トランスフォーメーションプロジェクトの実現方法に AI でどのような革命を引き起こせるか、特に、プロジェクト効率の向上とプロジェクトのリスク軽減を、 AI によってどのように促進できるか、といった調査も戦略的に優先しています。

「SAPの移行」や「デジタルトランスフォーメーション」には、ビジネスチームと IT チームが戦略の実行で足並みをそろえて、ビジネスの全体目標を達成できるようにする、などの課題がありますが、同時に、トランスフォーメーションを遂行するには、コスト効率に優れたタイムリーな方法で明確な ROI を達成するというハードルもあります。しかし、テクノロジーによってトランスフォーメーションを促進するという機運が、これほどまでに高まったことはありません。

Gartnerによる2024年CEO調査によると、成長の背後において CEO が 2024 年のビジネスで 2 番目に優先していることはテクノロジー関連の変革であり、ビジネストランスフォーメーションの次の原動力に関して言えば、AI がデジタルに取って代わり、最上位のテーマになっています。このレポートによると、59% の CEO は、AI が業界に最も影響するテクノロジーであると考えており、87% の CEO は、AI がビジネスにもたらす利益はリスクより大きいと考えています。

HCLTechのさまざまな業務で私が指揮するチームは、トランスフォーメーションに関する課題の軽減に取り組み、AI イニシアチブと POCを受け入れて革新と事業成長を大規模に押し進められるようにしています。RISE with SAPへのSAP移行を例に挙げて、AI によってSAPプログラムの実現を転換するというビジョンについてお話したいと思います。

ECCからRISE with SAPとS/4HANAへの移行:経営幹部の懸念事項

SAPは2018年に、SAP ECCと関連アプリケーションを使用している全企業は、2025 年までに SAP S/4HANAに移行する必要があると発表しました(その後、2027年に延期されました)。期限が近づくにつれてプロジェクトは着実に進行しているものの、多くの顧客は SAP S/4HANA への移行をまだ完了していません。SAP S/4HANAを使用するための主な商用コンポーネントとして RISE with SAPを導入するにあたり、企業はさまざまなクラウド製品の選択肢から、SuccessFactors、Ariba、Business Technology Platform などの SaaS ベース周辺アプリケーションと統合し、クラウドソリューションに移行する必要があります。

このため、企業は切迫した危機感を抱き、期限に間に合わせるために移行を急がざるを得ない状況となっています。さらに、熟練した移行のスペシャリストやその他の人材の不足がこの状況を複雑にして、効率的な実行を困難にしています。

ワークロードをSAP S/4HANAに移行するプロセスは (Oracle FusionやWorkday など、その他のプラットフォームと同様)、多面的なタスクであり、複雑なプロセス、データ、カスタマイズ、設定の分析と移行だけでなく、クラウドのインフラス内でのシームレスな統合と最適化も伴います。データの整合性やセキュリティの問題から移行プロセス中の業務の中断に至るまで、このような課題は、多くの場合、組織にとって大きなリスクとなります。

生成AIの役割

移行は迅速に低リスクで行い、お客様が新しいRISE with SAPの新しい特長や機能を受け入れられるように調整する必要があります。移行の主要部は迅速かつ正確に行い、ビジネスに対するリスクを最小限に抑える必要があります。移行の主要部に生成 AI を利用すると、SAP S/4HANAへの複雑な移行が容易になります。

生成AIには、高度な機械学習アルゴリズムと大規模言語モデル (LLM) の利用により、移行プロセスのリスクを軽減して、デジタルトランスフォーメーションの目標達成を加速し、プログラムの実現に革命的な進歩がもたらされる可能性があります。

1. データ移行のリスク軽減:以前は、移行中のデータの特定、分類、マッピングは手動で実行していたため、人為的ミスと矛盾が発生しがちでした。生成 AI を使用すると、データを自動的に分析してデータマップを生成し、シームレスで迅速な移行が可能になります。

2. 構成の分析と自動化:当社の顧客の多くは ERP インスタンスを複数抱えており、ECCからSAP S/4HANAへの転換方法は数多くあります。しかし、統合にはデータとコンフィギュレーションの統合が必要となる難しいプロセスを要します。AIがECCのコンフィギュレーションの分析と調整を支援し、自動化によって統合されたSAP S/4HANAインスタンスの設定と適用を可能にします。HCLTechのイノベーションチームは、AIを活用したプロセスの開発に挑戦してこの課題に対応し、24時間以内にターゲットとなるSAP S/4HANAのソリューションを構成できるようになりました。

3. コードの修復と最適化:古いコードには、多くの場合、新しいクラウド環境との互換性がありません。開発者は手作業でコードを修復して最適化する必要があります。生成 AI がコードのリファクタリング提案を生成し、クラウドのインフラとの整合性を確保することで、移行時に互換性の問題が発生するリスクを軽減することができます。

4. コード開発:BTPの一部としての SAP 独自の製品など、ローコードやノーコードのツールはすでにたくさんあります。しかし、当社では、コンサルタントがイノベーションと拡張をこれまで以上に速く開発できるようにすることが、生成AIの役割であると考えています。当社のイノベーションチームは、セキュアABAPコーダーツールで作業し、新しいABAPイノベーションの開発を加速しています。

5. テストと検証の自動化:移行が成功するかどうかは、テストと検証によって決まります。LLMと機械学習機能により、生成AIが手動テストケースとシナリオを自動化し、移行後のワークロードの質と整合性を確保します。

6. 能率的なプログラムの実現:生成AIの支援によって人間のスキルを補強し、ワークロードの正常な移行およびその他のデジタルトランスフォーメーション関連のタスクを完了させるために必要となる、熟練した人材への依存度を低減ことができます。

全般的に、生成AIの利用によって、これまで多大な手作業を要していた多くのタスクの自動化を加速することが可能となります。これにより熟練した移行スペシャリストへの依存度を低減することができ、SAP S/4HANA利用の業務リスクを軽減して、ビジネス価値を実現するまでの時間を短縮できます。

これは、SAPコンサルタントは要らなくなることを意味するのでしょうか? AIには多くの困難な仕事を加速する可能性を見出しています。同時に、まだ人間によるガイダンスと検証を必要とするツールであることも確かですが、より小規模なチームでも新機能や能力の採用に重点を置いて、顧客に事業価値を届けられるようになることが期待されます。

HCLTechのMigration FactoryはAIによってどうなるのか

HCLTechでは、Migration Factory などのAI主導ツールに投資し、企業が移行プロセスを効率化できるようにしています。そして、AIの応用によってMigration Studioがどのように変革するかというビジョンを打ち出しました。

Migrate+ 1.0

Migration Factoryの初期段階では、迅速なコンフィギュレーションを重視します。AIツールは、生成AIを活用したHCLTechのHANASmartソリューションで、カスタムコードを分析し、修正することができます。カスタムコードからSAP S/4HANAへの移行を自動化し、作業は数か月ではなくて数日で完了できます。

Migrate+ 2.0とその先

次の段階では、AIを活用したデータ移行を導入し、テストスクリプトの生成を自動化してトレーニング資料を作成し、総合的で効率的な移行プロセスを確保します。

その先では、AIとRPAを使用して、新しいSAP BTP機能へのカスタムコードの移行を自動化するという構想を描いています。この戦略構想は、継続的な改善と統合を重視し、SAP移行を長期的な成功に導きます。

生成AIで新しい可能性を切り開く

生成AIを利用すると、RISE with SAPソリューションによって実現する新しいビジネス機能を有効にすることで、SAP S/4HANA BrownまたはBluefield 移行に関連するリスクを軽減し、プログラムの実現プロセスを効率化して、事業価値の実現を加速できます。

HCLTechでは、AIチーム、製品チーム、デリバリーパートナーと協力し、お客様のためにプロジェクトをデリバリーする方法をさらに変革していけるように、様々な構想を描き、探求しています。

今後、組織は生成 AIの力を継続的に利用し、より速く効率的にプログラムを実現する新しい可能性を切り開き、最終的にはビジネスの成長を促進してデジタル時代で優位に立つことができるようになるでしょう。